2021.06.30
ワーケーションは有益か?
コロナ禍の中でいままでのオフィスワーク前提の働き方にこだわらない、
個人の自由度を重視するテレワークスタイルが定着して久しい。
自宅や最寄りのカフェなど好みの場所で仕事ができるなら、
会社側としても合理的だろうと思う。
その発展型ともいえるのがワーケーションではないか。
「ワーク」(労働)と「バケーション」(休暇)を組み合わせた造語で、
観光地やリゾート地でテレワーク(リモートワーク)を活用し、
働きながら休暇をとる過ごし方である。
このテレワークの効能について、先日の新聞に記事が出ていた。
「ワーケーションで仕事のストレス半減」というもの。
これは、和歌山(南紀白浜)でのワーケーションと東京での在宅勤務を比較した実証実験。
実験はシステム大手のTISとNTTデータ経営研究所、南紀白浜エアポートの合同で、
3月中に約2週間、TIS社員を中心とした男女20~50歳代20名を
白浜ワーケーション13人と東京在宅勤務7人に分け、
期間中とその前後の心身の状態などを専門医の監修を受けて比較した。
ワーケーション参加者は仕事上のストレスが期間中に約56%減、
頭痛や肩こり、食欲不振など身体的な不調は同約50%減だった。
一方、在宅勤務者に目立った変化は見られなかった。
さらに、ワーケーション参加者は日常業務への復帰後、
仕事のパフォーマンスの向上も認められたという。
和歌山県は日本のワーケーション先進地として官民連携で誘致を進めている、
との記事だった。
この記事からは
ワーケーションは社員にとってとても効果が図れて良いものだ、
というように読めなくもないが、本当にそうなんだろうか?
という疑問も同時に沸いた。
働く側の心理として東京での在宅勤務よりリゾート地でのテレワークのほうが新鮮で
心身の印象がいいのは当然に思う。
リフレッシュあとの仕事パフォーマンスもそりゃ上がるだろう。
だが、実際はワーケーションと言ってもどんなルールを定めるかによって
まったく違ってくると思う。
ワーケーション期間中は出張?休暇?
和歌山までの旅費や宿泊費の負担は?
勤務時間と自由時間の区別は?
労働対価は成果で測る?時間で測る?
ワーケーション中の事故は労災?
ワーケーションでの給与体系は?
いろいろ決めなければいけないことは山積みともいえる。
結局、
会社負担でリゾートに行って遊びながら勤務扱いになるなら社員は嬉しいだろうが、
会社側は成果が上がるようワーケーション勤務条件をしっかり定めなければ
簡単には始められないだろう。
ジョブ型のベンチャーなどは労務体系の自由度が高く実施も可能だが、
メンバーシップ型の一般企業では導入には大きな壁があるような気がする。
時流に乗ってなんとなく好意的に捉えられ、
導入することが是というイメージがあるワーケーション。
実際に効果の出るワーケーションにするためには
会社側の制度設計がとても重要だと感じた新聞記事だった。
筆:黒沢